Saturday, May 13, 2006

消失(序)

「最初は存在しなかったのさ。俺は——
三十六年前。やがてミルチア紛爭へつながる,ツォアル事變が起こった翌年だ。俺は,戰爭の道具としてこの世界に生まれた——。よくある話さ。他者を破壞することが俺——いや,俺達の存在意義だった。それに適應出來た奴は幸せだった。戰場で死ねた奴は,もっと幸せだったろう。だが俺にそれは訪れなかった。自分という存在に,なんら意義を見だせないまま,やがて戰爭は終わり,俺は世界から取り殘された。適應しようとはしたさ。だが,俺の言葉と,世界の言葉とは違った。世界が俺を拒絕していると思った。……今ならそれが解る。俺が世界を拒絕していたんだ。……”ここ”はいい。ここには俺だけが存在している。他はない。怒りも、哀しみも、喜びも、未來もない——ただ——“自分がある”だけだ。その自分も,やがては溶けていく——心地よい感じだ——。
俺は——この感じを——求めていたんだ——。」

安德魯‧佐倫哥夫消失於虛無海岸前遺言。
節錄自《Xenosaga Episode I:力への意志》。

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